LIFE STYLE CREATION FOR MEN'S

グロリアジョーンズ(マークボラン愛人)

#1403 Gloria Jones / Share My Love (1973)
 2011-03-13
01. Share My Love
02. Why Can't You Be Mine
03. Try Love
04. Tin Can People 【YouTube】
05. Oh Baby
06. Old Love, New Love
07. So Tired (Of the Way You're Treating Our Love Baby)
08. Baby Don'tcha Know (I'm Bleeding for You)
09. What Did I Do to Lose You

10. If I Were Your Woman [Original Demo] (Bonus Track)

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1980年代初頭にヒットを記録した「Tainted Love」という曲をご存知だろうか。この曲をヒットさせたのはマーク・アーモンドとデイヴ・ボールの男性2人によるイギリスのエレクトリック・デュオ、ソフト・セル。この曲は彼等以外にもマリリン・マンソン、コイル、インスパイラル・カーペッツ、エロティック・エキゾチック、Put3ska、インピーダンス、プッシーキャット・ドールズといったアーティスト達が取り上げている。マリリン・マンソンを始めとするアーティスト達の脳裏にはシンセ・ポップ全盛の1980年代前半にヒットを記録したソフト・セル版があったと思うが、実はこの「Tainted Love」なる曲はソフト・セル版がオリジナルではなくて、原曲は1964年にある黒人女性ソウル歌手が発表したものだった。その女性歌手の名前はグロリア・ジョーンズ(Gloria Jones)。ちなみに彼女が発表した当時はまったくヒットしなかった。こういう曲をシンセサイザーを利用してアレンジしてしまったのだから、最初に目を付けたソフト・セルの見識も凄かったという事なんだけど。

そのグロリア・ジョーンズなるソウル歌手は1970年代半ばに何故かロック・ファンから突如として注目される様になる。何故か。それは彼女がイギリスのある白人ロック・スターと恋におち、彼の子供を生んで、彼のバンドに参加して、更にその彼の死に遭遇してしまったからだ。その白人ロック・スターの名前はT・レックスのリード・ヴォーカリスト/ギタリストだったマーク・ボラン。マーク・ボランには1970年1月に結婚したジューン・チャイルドというレッキとした妻がいたのだが、1973年のアメリカ・ツアーの最中にグロリア・ジョーンズと出会って恋に落ち、グロリア・ジョーンズはマーク・ボランの子を宿してしまう。1975年9月には息子ローランが誕生。その後も2人の愛人関係が続くが、1977年9月16日にロック界を揺るがす事故が発生する。マーク・ボランはリッチモンドの自宅へ向う途中に交通事故に遭遇。当時助手席に居たマーク・ボランは衝突時の衝撃で後部座席に飛ばれさたという。運転していたのは当時の愛人グロリア・ジョーンズだった。この不幸な事件を契機にグロリア・ジョーンズは事実上引退同然となってしまったのだった。
1945年、米オハイオ州シンシナティの生まれ、ロサンゼルス育ち。歌う事に興味を覚えたのは7歳の時。14歳の時に(当時まだ学生であったが)フランキー・カールやビリー・プレストンらと The Cogic Singers なるゴスペル・グループを結成。このグループは1964年に The COGIC'S 名義(the Church Of God In Christ の略)で「It's a Blessing」なるゴスペル・アルバムを発表している。当時のメンバーはグロリア・ジョーンズ他、エドナ・ライト、アンドレ・クラウチ、ブリンキー・ウィリアムス、サンドラ・クロウチ。シングル盤も発表されたが、グロリア・ジョーンズはこの後、ソロに転じる。1964年、ソングライター/プロデューサーのエド・コッブにその才能を認められて彼女はコッブのレーベル、Greengrass Productions と契約してソロ・デビューを飾る事になる。最初のシングルは「Heartbeat Parts 1 / Heartbeat Parts 1」なるシングル。配給は Uptown Records(当時)からだった。

この後彼女は「Tainted Love / My Bad Boy Is Coming Home」「Come Go With Me / How Do You Tell An Angel」「Finders Keepers / Run One Flight Of Stairs」「When He Touches Me / Look What You Started」といったシングルを1960年代に発表。最初のアルバム「Come Go With Me」も1966年に発表したもののの、大きな成功を収める事なくソロ歌手としての彼女の '60年代は終わりを遂げている。この後、ミュージカルの仕事や作曲の仕事などもこなすなどの多忙な毎日を送っていたらしい。作曲家としては LaVerne Ware という変名で(時に Pam Sawyer と共作という形で)、Jimmy & David Ruffin、Bobby Taylor、Supremes、Junior Walker & The All Stars、Gladys Knight & The Pips、Sisters Love、Average White Band といったアーティスト達に曲を提供?(カバー?)している。自身の作品も発表。それが1973年にモータウンから発表した「Share My Love」である。

On "Share My Love", "Why Can't You Be Mine", "So Tired" and "What Did I Do To Lose You"

■ Lead Guitar - Stan Seymour, David T. Walker
■ Bass - Roderick "Peanut" Chandler
■ Keyboard - Jai Winding
■ Organ - Hubie Heard
■ Drums - Dale Loyola
■ Congos & Percussion - Joe Clayton, Bobeye Hall Porter
■ Tenor Saxophone - Greg Abate, Ernie Fields on "Share My Love"
■ Trumpet - Mike Crawford
■ Trombone - David Stout on "So Tired & What Did I Do To Lose You"
■ Background Vocals - Gloria Jones, Oma Drake & Stephanie Spruill

On "Try Love", "Baby Don'tcha Know", "Oh Baby", "Old Love New Love" and "Tin Can People"

■ Guitar - Charles Grimes
■ Bass - Willie Weeks
■ Keyboard - Jai Winding, Andre Moore, Bill Cuomo on "Tin Can People"
■ Drums - Earl Palmer on "Old Love New Love & Baby Don'tcha Know"
■ Congos - Joe Clayton, Sam Clayton
■ Tenor Saxophone & Flute - Don Menza
■ Trombone - Charlie Loper
■ Trumpet - Chuck Findley, Paul Hubinon
■ Baritone Saxophone - Ray Pizzi
■ Mandolin - Neil Levang on "Oh Baby"
■ Background Vocals - Gloria Jones, Gwen Edwards, Marsha Smith, Marsha Temmer, Laura Creamer, Oma Drake & Jessie Smith

「Share My Love」は1973年のモータウン作品。前作が1966年だから、ソロ歌手としては事実上の再デビュー作品と言ってもいいのかもしれない。実力的に問題なし、のソウル歌手だったが何故か当時は当らなかったが、歌唱能力といい、ソングライティングの能力といい、ある意味、マーク・ボランと出会わずにソウル歌手として活動を継続していたなら、もっと異なる局面が彼女に訪れていたかもしれない。CDは2009年に前年に発足したばかりの Reel Music から登場した。収録は全部で9曲(CDはボーナス・トラック1曲追加収録)。プロデュースは Tom Thacker、アレンジにモータウンの必殺仕事人 Paul Riser。録音には上記の様に多くの演奏家が参加。クレジットから判るとおり、大きく分けて2班(時期を分けて?)によって録音がなされている。この中にはソウル/R&B、ジャズなどのジャンルで活躍したデイヴィッド・T・ウォーカーを初め、グレッグ・アバテ、アーニー・フィールズ、ウィリー・ウィークス、アール・パーマー、サム・クレイトン、 チャック・フィンドレーらが参加。

個別の曲にも簡単に触れてみる。ファンク/ソウル/ノーザン・ソウルのファンだけでなく、ロック・ファン(特にスワンプ系)にもお奨め出来る要素もあるので嬉しい作品なんだ。「Share My Love」はアルバムの冒頭曲。ファンクなグルーヴをベースに管楽器セクションを大胆に配置したニュー・ソウル。イントロが長いのもソウル歌手のソロ作品としては珍しい。アーティスティックな側面からも評価出来るアレンジだ。「Why Can't You Be Mine」はおやおや、と唸ってしまう様なアレンジ。ソウル・ファンは勿論の事、スワンプ・ロック・ファンにもお奨めしたい内容に仕上がっている。黒人コーラス隊をバックにした、ゴキゲンなナンバーだ。「Try Love」は一転、ジョー・コッカーに歌わせてみたい様な渋いバラード・ナンバー。大袈裟なストリングスが導入されても彼女の歌はまったく負けていない。「Tin Can People」も異色。ファンク、ロック、ブルースの要素が混在した、印象としてはハード・ファンク系の女性歌手ベティー・デイヴィス風。

「Oh Baby」は旧アナログ・レコードのB面冒頭曲。前曲でハード・ファンクに決めたら、今度はスパニッシュ風ときた。オーソドックスな定番ソウル・スタイルでない本作の作風に当時の黒人音楽のファンはかなり面食らったに違いない。まあ、私としてはこの様な規格外れの方が面白いのだけれども。曲は途中から、またしてもベティー・デイヴィス風のハード・ファンク調にアレンジ。それでもスパニッシュ風情が導入されているのだから、通り一辺倒のソウル・アルバムを期待している人は面食らってしまうだろう。非常に個性的なアレンジだ。「Old Love, New Love」はグロリア・ジョーンズ単独作品。これぞモータウンといったソウル・ナンバー。甘口のストリングスの導入も効果的。名曲だ。ギターはチャーリー・グライムズ。「So Tired (Of The Way You're Treating Our Love Baby)」はグロリア・ジョーンズとポール・ライザーとの共作曲。ギターはデイヴィッド・T・ウォーカー。

「Baby Don'tcha Know (I'm Bleeding For You)」もグロリア・ジョーンズ単独作による垢抜けた軽快なスワンピー・ナンバー。当時シングル化もなされている。「What Did I Do To Lose You」は本編の最終曲。ソングライティング・コンビの Pam Sawyer との共作曲。彼女の歌唱力にスポットを当てたバラード・ナンバー。これまた大袈裟なストリングス入り。CDにはあと1曲。「If I Were Your Woman」は彼女がグラディス・ナイト&ザ・ピップスの為に書いた曲のデモ・テイク。ソウル・ファンなら是非聴き比べして欲しい。この後、ご承知の通り、彼女には大きな転機が訪れる。彼女が1969年にミュージカル『Hair』に出演した時から既に顔見知りだったマーク・ボランとの関係だ。彼女は1970年代前半の時点でT・レックスの作品にバック・ヴォーカリストとして参加するなど、T・レックスのアルバム制作やコンサート・ツアーに欠かす事の出来ない存在となっていたが、じきに男女の関係となって公私ともどもマーク・ボランと深く関係していく(本妻ジューンとは1973年頃から別居)。

1975年頃からはキーボード兼ヴォーカリストとしてグロリア・ジョーンズはT・レックスに正式参加(それ以前にゲスト参加あり)。結果、晩年のT・レックス・サウンドには黒人音楽のエキスが深く導入される事となる。この時代の作品に「Bolan's Zip Gun」「Futuristic Dragon」「Dandy in the Underworld」 など。また、彼女自身も所属レーベルをT・レックスと同じEMIに移して1976年にマーク・ボランとの共同プロデュースによる「Vixen」を発表するが、1977年に不幸な事故が発生。1978年に彼女は「Windstorm」というソロ・アルバムを発表して健在ぶりを発揮するが、白人ロック・スターを運転中に死去させてしまった黒人の愛人歌手、という世間の視線に絶えられなかったのか、この後彼女は「Reunited」(1982年)、「Gloria Jones」(1990年)といった作品を発表したのみで、自身のソロ作発表には消極的になってしまった。あんな事故がなかれば彼女の音楽人生も今とは異なる局面を迎えていた筈である。

まあ、彼女の存在もソフト・セルの存在によって1980年代以降、再度脚光を浴びる事になったのも事実。1989年にはイギリス・バーミンガム出身の3人組ポップス/ソウル・バンド、ファイン・ヤング・カニバルズが彼女のかつてのシングル、「Tainted Love」のイントロをまんまパクッた「Good Thing」なるヒット・シングルを発表したっけ。CD化は2009年になってようやくだから、これから彼女の評価もじわりと上がっていくに違いない。追伸、こういう傾向のアルバムはこの作品だけのようなので、彼女の他の作品に本作のイメージを重ねるのはご注意を。
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by saika123 | 2011-12-28 09:12 | 70年代ロックファッション
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